2006年06月18日

いきなりノベルコーナー

ま「今日はいきなり、むかーしに書いた小説を掲載してみるよ、コレは確か高校生の頃に書いたんだったかな・・・当時はまだポケットモンスターもかなり流行っていた時期で、いまもやってるらしいけど、アニメも人気だったみたい、でもアニメもゲームのほうも、なんとなくお子様向けっていうのがぬぐえなかったんで、もうちょっと上の年齢向けに、シナリオ書いてみようかなー、と思ったのが書いたきっかけだったんだ〜、一応原作を知らない人にも読めるようにしてあるけど、補足説明も付け足しつつ、のせてみまーす、まぁ楽しんでくれれば幸い、かな? ほんではスタート!」

ポケットモンスターオリジナルノベル

主人公: 不死火 直夜(ふしび なおや)
年齢15歳前後 ある事情により、生まれ故郷ジョウトをはなれ、カントー地方へとやってきている、歳相応の若々しい情熱と、不釣合いな判断力をもつ。


あと、原作のタイトルを知っていても、種族の名前から形が想像できないとおもうので簡単に、

ヨルノズク・・・作品中ではフォロンがこの種族、フクロウにそっくりのモンスター

スイクン・・・セレスの種族、原作においてもカタカナ表記だけど、小説中は雰囲気を出すため漢字表記にしてる、ROでいうとハティーに近い姿かな。

ニドキング・・・敵役は今回これ、でっかいネズミ、ゴーレムサイズのクランプを想像すると近いと思う。

ネイティオ・・・今回は出番が無いシーボニィの種族、ROでは・・・ヒルウィンドが近いかな? 鳥人間のような姿

オーダイル・・・おなじく出番の少ないナキの種族、青いアリゲーターの格好



ほいでは、本編をどーぞ☆

「あっ、おいお前! トレーナーだろ? 勝負しようぜ」

・・・甘かったな、と俺は思った。
今、俺が歩いているのは、通常の登山道から少し外れたところにある、草の根が深い獣道。
なるべく他のトレーナーとの無駄な勝負を避けたかった「俺達」は、
多少遅くなってでも、遠回りすることに決め、わざわざ有刺鉄線のフェンスを乗り越えてまで、こっちの道を歩いてきたのだが・・・

ゆっくりと振り返ると、そこには、ボーイスカウト風の服装をした男が立っていた。
年は俺と同じくらい・・・十六、七といったところか。
姿格好は、それこそ「さわやかピクニック青年!」といった風だが、あまり服装に馴染んではいない、やたらギラギラとした目つきが、俺は少し気になった。

「よくもまぁ、こんなところにいられるもんだな」

俺は、とりあえず探りを入れるために、こっちから話しかける事にした。
「俺がたまたま通ったから良かったけど、でなきゃ一日中待ちぼうけだったんじゃねぇか?」

すると男は、口をあけて笑い、
「ははは・・・所が、そうでも無いんだよ、トレーナーの中には、お前みたいに無駄に戦いたくないって考える奴が多いんだ、んで、そういった連中は大体こっちのルートを使う、つまり、こっちの道ってのは、トレーナーに会う確立が高いってワケなんだ」

ああ・・・そう言う事か・・・

俺は思わず肩を落とした。
こんな歩くにも一苦労な場所選んで遠回りした挙句、結局トレーナーに掴まるとは・・・

トレーナーとは、今や日本だけにとどまらず、世界各国でもその姿が確認されている、大小様々なモンスターを、自分の信念と愛情をもって育て上げ、共に戦う者の事を指す。
故にトレーナー同士が出会ったならば、己のトレーナーとしての腕と、パートナーであるモンスターの強さを競い合うための勝負が行われる事は必然と言えるだろう。
しかし、そうそう毎回勝負に引っ張りだされては、モンスターにしてみればたまったもんじゃない、俺もまた右に同じである。

俺はよく「トレーナーらしくない」などと言われるが、俺は必要以上に暴れる事を望んでいないだけなのだ。
だが、俺の目の前にいるこの男は違うようだ、必要以上にしか暴れたく無いとでもいいたげなその瞳が、さっきから俺を捉えつづけている。

「なぁ、俺は今日何人目のトレーナーだ・・・?」
なんとなくつかれた口調で尋ねると、男はにやっ、と笑って答えた。
「六人目さ、皆お前と同じリアクションして、勝負に負けていったぜ」
その時、近くに生えていた小枝が、男の腰に下げているポーチを軽く叩いた。
ポーチからは、沢山の金属がぶつかるような、チャラチャラという音がたつ。
――手持ちの小銭にしては不自然な程に、

ははぁん、なるほど・・・そういう事か。
「じゃあ、俺負けるのいやだからこのままサヨナラ・・・ってぇのはナシか?」
「ご愁傷様・・・わりぃが、俺はお前を逃がす気は無いぜ」

だろうな、と俺は心の中でつぶやいた。
コイツがここにいる目的は、ただ純粋に勝負がしたいからでは無いだろう。
この男の正体が、なんとなくわかりかけてきた俺は、最後にカマをかけて見る事にした。

「でも・・・こんな所で勝負するのかよ? やりにくくってしょうがないぜ」
わざとらしく無い程度に、肩をすくめてみせる。
コイツが正真正銘の普通のトレーナーで、「えっ? そう? じゃあ勝負はやめよう」なんていってくれたらものすごく助かるんだが・・

男の返事は、俺の予想通り、そして、俺の期待を裏切るものだった。
「そう言うと思って、向こうにいい場所見つけてあるんだよ・・・ひらけた野原で、誰にも邪魔される心配はねぇ」

やっぱりな、
俺は確信した、コイツはただのトレーナーじゃない。

「しょーがねぇ、勝負するか」
俺は、あくまで何も悟っていない風を装って、相手の話に乗る事にした。
「そう来ないとな、ついて来いよ、こっちだ」
言って男は、雑木林の中へと姿を消した。

「はぁ、やれやれ・・・」
俺は全身に、取り出した虫除けスプレーを吹きつけながら、相手の背中を見失わない程度に離れて後を追った。
この先で、一体何が起こるのか、大体の見当がついている以上、準備をしておかなくてはならない。
時折、ちらちらとこっちを振り返る男の目を盗んで、俺は背負っていたバックのサイドポケットを開けた。

そこには、手のひらに収まる程度のサイズを持った、軽量金属のボールが五つ、入っている。
モンスターボール、と一般に呼称される、簡易捕獲装置の一種だ。
物体縮小、保存を可能としたテクノロジーの塊だが、改良による大幅なコストダウンのおかげで、小学生でも簡単に購入できる。
そして、コレを一つでも所持しているならば、ソイツは「トレーナー」と呼ばれるわけだ。
因みに、このボールによって、ポケットに入れたまま持ち運びが出きる事から、モンスター達の事を、「ポケットモンスター」もしくは「ポケモン」と総称する。

俺はその中から、三つのボールを取り出し、軽くゆすった。
しばらくして、中から眠たげな声が聞こえてきた。
「うぅ〜ん・・・・どーしたのナオちゃん・・・? まちについたの?」
「まだ日が高い、街に着く時間帯では無いな、ナオヤ?」
「確かに、かすかだが、木の匂いがする」
「えぇ〜っ!? じゃあ、どーしてボクたちおこされちゃったのー?」
「ナオヤ様・・・よもや、つまらん勝負を受けてしまわれたのではないでしょうな?」
「くだらぬ、その辺の小物など、相手にする必要などないわ、ナオヤ、お主一人で何とかするがよい」
起き出したとたん、ボールはぎゃーぎゃーと元気良く騒ぎ出した。

まったく、元気だけは有り余ってやがる。
「しょーがねーだろぉ? 向こうがやる気満々なんだから、それに、お前ら最近まともに戦ってねーじゃんかよ、三人の内のだれかでいいから、ホラ、運動不足になる前に出て来いよ」

数秒の沈黙、

「フォロンよ、ソチが行け、朕はもう一眠りさせてもらうぞ」
「なんだと!? シーボニィ!! 貴様自分勝手が過ぎるぞ!!」
「わあぁ、ふたりとも、ケンカしちゃダメだよぉ〜! こーゆーときこそ、なかよくしなきゃいけないんだよっ!?」
「ならナキ、お主・・・行くか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐぅ〜」
「寝たふりするでないわ! このたわけ!! オオバカモノ!!」
「わ〜〜ん! シーちゃんがバカっていった〜!!」

はぁ、なんか・・・もう疲れた・・・

「・・・・・・フォロン、頼むわ、お前なら問題無いだろうし」
「っな! ナオヤ様! ここはこのシーボニィのアホが行くべきで・・・」
「あとで木の実のでっかい奴、買ってやるからさ・・・それに、相手がどうやらマトモじゃない」
「・・・・・・解り申した」
話の判るやつで助かる。

「おい! さっきから何ブツブツ言ってんだ?」
前を歩いていた男が、振りかえって、けげんそうに俺を見た。
「ん、ああ・・・なんでもない、所で、場所はここでいいのか?」

俺達は、何時の間にか、かなり視界の開けた野原に出ていた。
確かに、ここなら大型のポケモンを繰り出した所で立ち回りに不自由は無い、勝負には持って来い、といったところか。
それに、第三者の横槍も入らない・・・いろんな意味で都合がいいと言えるだろう。

男が、さっき出てきた道を塞ぐ形で回りこむ。
「ああ・・・ここでいいのさ」
男の顔着きが、その目にふさわしく変わっていた。
「へっへっへ・・・悪いが、アンタのポケモンと有り金全部・・・おいてってもらおうか」
俺は思わずため息を一つついて、かぶりを振った。
「こういう予想は、的中しても全然嬉しく無いな・・・・ロケットの連中か」
「へぇ・・・」
男が片方の眉を跳ね上げた、驚いたのだろう、俺がロケット団の存在を知っていた事を。

ロケット団・・・
捕獲したポケモンの裏取引や、ポケモンを使った犯罪を各地で引き起こしている、いうなれば新手のシンジケートだ。
彼らの実体は公にされていないが、俺は旅の途中、偶然巻き込まれたある事件をきっかけに、コイツらの存在を知る事となった。

「あんな所で待ち伏せして、よっぽど真面目にトレーナーしてる奴なんだなと感心していたんだが・・・ポケモンつかった金稼ぎしか思いつかないバカだったとはな・・・幻滅したぜ」
「黙れっ!! 袋のねずみの分際でデカイ口たたくんじゃねぇ!」
思っても無いことを言う俺に、男はあっという間に熱くなった。
ロケット団とはいえ、下っ端はこんなチンピラと大差の無い奴ばかりである。

「道は空けてもらうぜ」
俺は手にしたボールを、中空に放った。
瞬間、そこに影が生まれる。
まるで舞踊るかのような軽やかさで、一匹の大きなフクロウが、俺の差し出した腕に止まった。

ヨルノズク、
おもに夜を活動時間とする、フクロウ型の有翼科ポケモンの一種。
その羽はとても柔らかく、飛び立つときの羽音を発しない、これを利用して、ヨルノズクは食料となる小動物を、確実に「暗殺」する。

まあ、最もコイツは、一般のヨルノズクとは違い、ベジタリアンだし、どちらかと言うと昼型なんだが・・・
それと、普通のヨルノズクと決定的に違う部分がある、それは・・・
「わりぃな、フォロン」
「もったいなきお言葉にございます・・・ところで、さっきの約束、お忘れなきよう」
ヨルノズク、フォロンは、さっきのボールの中と、何ら変わり無い声で、ちゃっかりした事を言った。

「なぁっ!? なんだ? そのヨルノズク!? しゃべれるのかよ!!?」
下っ端はフォロンを見て、心底驚いた声をあげる。

それも無理も無い事だが、
一般に、ポケモンが人の言葉をしゃべるなど、あり得ない事だからだ。
しかし、世界には、「例外」というものがある。
俺は、どういう因果か、「人の言葉を解するポケモン」に縁が深い。
事実、俺が今共に旅をしている五匹のポケモンは、そうなった原因はまちまちだが、全て人語を自在に操る。
ついでに言うと、このフォロンは、まだヒナだった頃から俺と一緒に生活していたせいで、人の言葉が話せるようになったらしい。

「・・・変わってるだろ?」
ワザトらしくおどけてみせる。
途端、男の表情が、笑みの形にゆがむ。
「へっへっへ・・・コイツはいいぜ、しゃべるポケモン・・・絶対に高く売れる」
やれやれ、こういった奴の頭には、それしかないのか。
ふと、手に止まっているフォロンをみると、双眸がすうっ、と細くなっていた。
かなり頭に来てるな・・・

「賊よ」
フォロンが朗々とした声で、下っ端に語り掛けた。
静かな口調が、その怒りの深さを、より鮮明に表している。
「即刻、その道を空けるのだ、さすれば、痛い目も合わずにすむだろう、今ならば我が主ナオヤ様も、きっとお許しになる、考え直せ」

しかし、下っ端は、下品につばを地面に吐きつけると、ベルトからボールを取り出した。
「うるせぇんだよ! フクロウごときが人間様に説教なんぞたれやがって! てめぇはあとで見世物小屋にでも高く売りつけてやる! 覚悟しておけよ!!」
ボールを高く投げる音に、フォロンの「バカが」という呟きが重なった。
ボールは一瞬にして巨大な影となり、地響きと共に地面に降り立つ。
「さあ行け! カイザー!!」
主人の命に答え、巨大な獣が咆哮をあげる。

ニドキング、中型雑食科のポケモン、ニドランの雄が、常に戦闘状態である生活の中を生き残り、極限まで成長した姿をあらわす呼称である。
キングの名にふさわしく、巨体から繰り出す攻撃は、一撃必倒の威力を持ち合わせる。

「さぁ! コイツをみて気が変わったってんなら、ボールと金置いていきな! そうすりゃ命だけは助けてやるぜ!」
自信満々といった顔で、男は言い放つ。
だがこちらは、負ける気などさらさらない。

「やれるだろ? フォロン」
「まったく問題ありません」
「悪いのはアイツであって、ポケモンじゃない・・・やり過ぎるなよ、大怪我とかさせると可愛そうだ」
「仰せのままに」
フォロンの瞳に微笑みの色が混じる。
また、甘いとか考えているんだろうな、

ふわり、とフォロンが飛び立つ。
音も無く地面に降り立ち、ニドキングと真っ向から対峙する。
完全に相手の間合いの中に身を置いているが、フォロンはさして緊張もしていない。
むしろ、相手を挑発するように見上げている。
「さて・・・始めるか、王の名を冠されしものよ・・・鼠の王がどれほどできるか、このフォロンが試してやろう」
その声に答えるように、ニドキング、カイザーは、轟音と共にその巨大な爪を振り下ろす。
・・・が、

「・・・一体、どこを見ている」
カイザーの真後ろ、ちょうど死角となる所に、フォロンは一瞬で身を運んでいた。
カイザーが振りかえるよりも早く、フォロンの影が弧を描く。
風が急速にその方向を捻じ曲げられ、そこに衝撃がうまれる。

バキィイイイイイッ!!

何か巨大な質量を持った物体が衝突したような音が轟き、カイザーの巨体がぐらり、と傾く。
だが、カイザーは何とか踏みとどまり、怒りのうめき声を上げる。
フォロンは近くの木の枝に降り立ち、隙の無い体制で、カイザーを見下ろす。
「ほぅ、今のを堪えたか・・・しかし、その分、余計に痛い目に合ってもらわねばならんな」
再びフォロンの姿が掻き消える。

衝撃、

カイザーがまた、おおきくよろめく。
カイザーも、腕を必死に振りまわしているが、フォロンにはかすり傷一つ負わす事はできない。
「ふん・・・元から解りきっていた勝敗だが・・・これまでだな」
いきなり手にしたボールから、声が上がった。
「起きてたのか、シーボニィ」
「我々に勝負を挑んできたバカものが、一体どんな阿呆ヅラをしておるのか見ておこうと思うてな」

こうしている合間にも、攻撃が空ぶるたびに、カイザーの体に痣が出来ていく。
「彼奴がいかに剛力であろうとも、所詮はバカの一つ覚え、フォロンに勝てるはずも無い・・・ウドの大木には、風を捕らえる事はできぬのだからな」
衝撃音が続く中、次第にカイザーの動きが弱々しくなってきた。
ダメージが蓄積して来た証拠だ。

「くっ、くそっ、一体何なんだよ、そのヨルノズクはっ!? 喋る上に、ニドキングを手玉に取るなんて・・・
 まるで化けもんじゃねえか!!」
下っ端は、ヒステリックな声をあげる。
まさか、自分の自慢のニドキングが、明らかに体格の小さいヨルノズクに負けるはずがないと思っていたのだろう。
予想外のことに、パニックになっているようだ。

「フォロンは化けモンじゃねえよ」
俺は、見ていて面白いくらいにうろたえている下っ端に、声をかけてやった。
「・・・ポケモン、さ」
「ふ、ふざけやがって!!」
下っ端の額に青筋が浮かぶ。
・・・冗談の通じない奴。

「カイザー!! 何やってやがんだ! 一発当てりゃそれでいいんだよっ!!」
俺への怒りものせて、八つ当り気味にカイザーに命令を飛ばす。
「見苦しいな、ただ感情のままに吼えた所で、状況が好転する事など無いというのに・・・あのような男が主人では、あのカイザーとやらも浮かばれまい」
「そうだな・・・フォロンも同じ考えだと思うぜ、シーボニィ」
大上段の一撃を空ぶったカイザーの鼻先で、空気が渦を巻く。

「終わらせる・・・もう、動くな」
一瞬で間合いを詰めたフォロンが、翼を振り上げる。
加速の勢いを乗せた彼の翼が、強烈なアッパーカットとなって、放たれた。
電光石火のごとく打ち上げられた一撃は、本来柔軟なはずの翼を、鋼と変えてカイザーの顎を穿つ。

ゴッッ!!

篭るような鈍い打撃音が響き、カイザーの巨体が崩れ落ちた。
白目をむき、完全に伸びている。
「ば、バカなっ!! こんなハズでは・・・」
下っ端が肩ひざをついた。

「私の勝ちだ」
始めの時のように、軽やかな仕草で、俺の肩にフォロンは止まった。
「大きな怪我はさせていない・・・ナオヤ様のご命令であるからな」
俯いたまま動かない下っ端に静かな口調で語り掛ける。
「さあ、今度こそ道を空けよ・・・もうこれ以上、己の無力さを開け出す事もあるまい」
「フォロン・・・もういいよ、負けた相手にあんま辛く当たるのも、性格悪いしな」
「御意」
フォロンは、翼を腕の変わりに、「控え」の形を取った。

「へへへへへへへへへへへへへ・・・・・・・」
その時、下っ端がゆらり、と立ち上がった。
手にはボールを、四つ。
「俺がバカだったぜ・・・そうだよ、俺は、栄光あるロケット団なんだ・・・いちいち勝負のルールなんか守ってられるかよ・・・そうさ、最初からこうすればよかったんだ・・・」
ギラギラとしたその目には、狂気にも似た、禍禍しい暴力の色があった。

「・・・何をする気なんだ?」
俺の問いに、にやりとした笑みで答えると、下っ端は一斉に、手にしたボールを放った。

響く轟音。

そこには、さっきのカイザーよりも大きなニドキングが、四体現れていた。
「もう、ルールなんか関係無い・・・ってわけか、ほとほと、情けない奴」
俺は肩をすくめてみせた。
通常、ポケモン勝負と言うものは、一対一の形式で行われる。
このルールを破れば、永久に、トレーナー資格を剥奪されるのだが・・・
下っ端の表情には、禁忌を侵した罪悪感など微塵もなかった。

「へへへ、どうだ? これだけの数だ、いかにお前のフクロウが強くたって、四匹一片に相手できるはずがねえ! ・・・俺の勝ちだ!」
大口を空けて高笑いをする下っ端をみて、フォロンが怒りを燃やしているのが解る。
「おのれ・・・・・・ナオヤ様のお慈悲を踏みにじりおって・・・」
今にも飛び出していきそうなフォロンをなだめようとしたその時、

「ちょーっと待ちんさい!」

清流のような美しく澄んだ声が聞こえてきた。
その場にいた全員が動きを止める。
「なんや外が騒がしい思うて、さっきから聞いていれば、そこのお兄ちゃん、ずいぶん勝手なこというてはりますねぇ」
「なっ! なんだ!? どこにいやがる!?」
下っ端とニドキングが辺りをうかがうが、もちろん姿はない。

俺はリュックから、新しく一つのボールを取り出した。
声はそこから出ているのだ。
「セレス・・・・? どうしたんだよ? 一体」
「えっ!? ああ、ちょっとウチ、ガマンできへんのよ、こういう男には・・・いきなり人気の無い所に連れ込んで、やれ金を出せーいうし、勝負に負けた思ったら、今度は大勢で掛かってくるし・・・ヒキョウモンって言葉がピッタリや! それに一番ゆるせへんのは、ウチの愛しい愛しいナオヤはんが、せっかくなるべく争いの無いようにしてあげてはるの、全部台無しにしてることやわ! もう許せへん、ナオヤはん、ここはウチにまかせて!」
手のひらの上でゆらゆら揺れながら、流れるように、それでいて怒涛の勢いで喋っていく。
つーか、「愛しい」って・・・お前なぁ・・・

「またしゃべるポケモンかよ!?」
驚きに目を丸くする下っ端に愛想笑いすると、俺はボールに向き直った。
「まかせてって、もうフォロンがでてるんだぞ? それにさセレス、お前、最近頑張ってるじゃんか、今無理にでなくてもいいって」
「その通りですよセレス殿、このフォロン、あの程度の相手が束になったところで、決して引けはとりません」
肩のフォロンも、付け加える。
「ああぁ〜ん! そないなこといわずにぃ〜! ウチかて、フォロンちゃんの事、信頼してへんのんとちゃいます、せやけど、あの男はどーしてもウチの手でヘコましてやりたいねん、ねぇフォロンちゃん、お願い、ウチの『おとめごころ』っちゅーの、察して欲しいのや、ナオヤはんも、ね、ね? いいでしょ? ウチはもっともっと、ナオヤはんのお役に立ちたいんや、だからウチの事、使って! 後生や〜」

ピョンピョン跳ねたり、俺の体に擦り寄ったりと忙しく動くボールを見る内、俺はなんだかひどく疲れてきた。
隣をみると、すっかり気を削がれたフォロンが、困り顔で俺を見ていた。
「・・・どうなさいましょう?」
「・・・どーすっかな・・・」
その間、俺の手元では、なおもボールがわーわーきゃーきゃー言って跳ねている。
「・・・あの・・・セレス殿が、どうしてもとおっしゃるならば・・・私は構いませんが・・・」
妙に疲れた口調で、フォロンが折れた。
「そっか、あんがとなフォロン・・・セレス、聞いた通りだ、無茶な事はするなよ」
「きゃー! ホンマにええの!? おおきになーフォロンちゃん! よっ、男前! よぉ〜し!」
ぴょこん、とボールは一人でに俺の手から飛び降りた。

通常、モンスターボール内に捕獲されたポケモンは、内部での行動こそ自由だが、決してボールへの物理的干渉ができないようにされているのだが・・・
「彼女」は、そんなボールの束縛を物ともしていない。
それも当然の話である、
「彼女」は、自らの意志で俺達に同行しているだけで、本来ならば、ボールごときで捕縛できる存在ではないのだ。

一陣の風が、吹いた。
冷たく、凛とした鋭さをもった凍れる風が、
八月、真夏の炎天下に。

「なっ、なんなんだ!? そいつは!?」
下っ端が、もう何回目になるかもわからない、驚きの声を上げる。

俺を守護するように、「彼女」は立っていた。
穢れ無き純白と、荘厳さを生む清らかな蒼に染められた体毛、
人を遥かに超える英知と、生きる喜びに打ち震えるあどけなさが同居した、水晶の瞳、
それは、生きながらに伝説と化した、美しき「神」の姿。

「アンタなんかに、『そいつ』呼ばわりされる筋合いなんかないわ」
彼女・・・セレスが、嘲りすらこめた口調で言い返す。
「くっ・・・見た事もねぇ奴だ・・・お、おい! どうした、かかれ!!」
下っ端は、思い出したように周りのニドキング達に命令した。

しかし、
ニドキングたちは、セレスの姿を認めた時から、その場を動こうとしていなかった。
彼らは知ってしまったのだ、知性ではなく本能で。
自分達の前にいる存在が、絶対に侵す事のできない領域に居るものだという事を、

「ふふふふ・・・ネズミちゃん達は、少なくともアンタよりは賢いみたいやわ」
「なっ、なにをっ!?」
「わからんなら、それでもええ・・・もうこれ以上、アンタみたいなのをナオヤはんの視界にいれとう無いから・・・一発で決めたるわ」
セレスの目から、「情」の色が消え去った。
彼女の足元にあった草が、一瞬の内に凍り付き、砕け散った。
ニドキング達が、怯えの声を上げる。

「我が名は、『水君』」

逆らう事も叶わぬ、絶対的な厳粛さをもって、彼女は律した。
彼女が、『セレス』になる前の、己の名を。

彼女の体から、青白い光が立ち登る。
「尊きて、命育みし水、美しく、命奪いし氷、それら全てを支配せしモノ」
神威を体現する光の衣をまとい、彼女は今再び「伝説」へと立ち還る。

彼女は、他のポケモン達とは、根本から違う存在なのだ。
自然の原理を司るべくして生まれた、三匹のポケモンがいる事を、俺は以前立ち寄った古寺で聞かされた。
猛き炎と荒ぶる大地とを統べるモノ、『炎帝』、
轟く雷と嵐とを率いるモノ、『雷皇』、
そして・・・『水君』、
彼らは、自らの名によって、大いなる力を振るう事を許され、それと同時に、伝説としての存在でい続ける事を強いられているという。
そして、その呪縛から彼らを解き放つ方法はただ一つ、彼らが主と認めた者によって、名を書換えられる事。
そう・・・『セレス』とは、俺が「彼女」に与えた名前なのである。

「我に牙剥きし者達よ・・・生きた『伝説』に向かう事の愚かさを、その体に刻もう」
肩に止まったままのフォロンが、かぶりを振った。
恐らくは、敗者達を哀れんで。

『水君』の口が、人間には聞き取る事のできない音を発した。

シュウウウウウウウウウ・・・

『水君』の纏う光の衣が、蒼き光の渦となってニドキング達に襲いかかった。
悲鳴を上げるいと間すらなく。
ニドキング達は、その周りの草花ごと、氷漬けとなっていた。
腕から垂れるツララに、真夏の陽光が照り映える。
そして・・・

「く、くそぉっ!」
下っ端もまた、下半身を氷塊に縛られ、地に伏せていた。
激しい憎悪のまなざしを、俺と『水君』に向ける。
「狂気断ち切ってなお、敵意を失わないか・・・心無き人よ、いまだ我に刃向かうか」
「うるせぇ! うるせぇうるせぇうるせぇっ!! 俺を見下すんじゃねぇ!! 化け物!!」
内なる黒い衝動に駆られるまま、下っ端は『水君』に暴言を吐きつづける。
それが、己の寿命を縮めてしまう行為だというのに。

「・・・そうか」

『水君』が、静かに下っ端に視線を落とす。
「情」の映らぬ瞳に射抜かれ、下っ端はようやく理解した。
彼女が一体、何をするのかを、

「ならば、誰にも見下されぬようにしてやろう」
『水君』の光の衣が、緩やかに明滅した。
蒼き影が翻り、空中に、幾本もの氷の剣を生み出す。
「死ね」
下っ端が、声になら無い悲鳴を上げた。

「『セレス』、そこまでだ」

カチャァン・・・

下っ端の目前にまで迫っていた氷の剣が、音をたてて地面に落ちた。
数秒の沈黙、
「・・・ふぅ〜、ちょっとやりすぎたかもしれんわね」
完全に気を失ってしまった下っ端を一瞥すると、彼女はこっちに振り向く。
『セレス』は、いたずらっぽく、俺に微笑んで見せた。
「・・・まあな、とにかくご苦労さん」

俺はゆっくりとセレス達のところに歩いていった。
「ふふっ、ナオヤはんたら、ウチはナオヤはんのお役に立つ事したんやもの、苦労だなんて、思ってまへんわ、それより、ウチのワガママ

聞いてくれはって、ほんにおおきにな、フォロンちゃんも」
すっかりいつもの調子に戻ったセレスが、また流れるような勢いで喋り出す。
「いえ、お気になさらず・・・それより、セレス殿・・・・・・この者達は」

フォロンは、周りに立っている、氷漬けのニドキングらをぐるりと見渡した。
「だいじょーぶ! 単に氷に閉じ込めただけやから、この日差しやと、一時間もせんと動けるようになるわ」
なるほど、近づいてよく見ると、氷そのものは厚いが、きちんと空気穴もできている。
「これなら平気かな・・・ちゃんと考えてんな、偉いぞセレス」
俺はそっ、とセレスの頭に手を置き、優しく撫でてやった。
「きゃ〜! うれしいわぁ、ナオヤはんに頭撫でてもらうなんて・・・ウチ、当然の事をしただけやのに・・・」
セレスは、幸せそうに目を細め、俺に擦り寄ってくる。
それから俺は、動けないままの下っ端達から離れ、木陰に入って、その場に足を放り出して座った。
十数分くらい、セレスが離れなかったが、ちょうどいい休憩になった、
ここまで歩いてきた疲れを多少なりとも回復できたようだ。

「・・・にしても、ちょっと時間食っちまったな、いそがねぇと、ニビに着く前に夜になっちまうぜ」
まだニコニコ顔で俺の横にピッタリと寄り添ったままのセレスはとりあえず置いといて、俺は近くの横木にとまって、毛繕いをしているフ

ォロンと話していた。
「ええ、下手をすると、また今夜も野宿、という事になってしまいます」
フォロンは、心配そうに俺を見ながら、オレの言葉に同意した。
恐らく、野宿をする、という事よりも、野宿をする事によって、俺の体に負担がかかることの方を心配してくれているのだろう。
「急ぐ旅とはいえ、無理をしてナオヤ様がお体を壊されては、元も子もありません」
「だよなぁー、肝心なときにボールも放れないんじゃ、どーしよーもねぇもんな」
今まで横で話を聞いていたセレスが、俺の太ももの辺りに自分の頭を摺り寄せながら甘えた声を上げた。
「ここ二日丸々歩きっぱなしやもんねぇ、かわいそうなナオヤはん・・・今夜こそは、ちゃーんとした寝床で寝させてあげたいわ」
服を通して感じる彼女の体温に、快感とも不快ともつかない、ひどく照れくさいものを感じた俺は、話題を切り上げる事にした。

「んじゃあ、そろそろ行くか?」
俺はゆっくりと立ちあがると、二人にかからないように、ズボンの土を払った。
リュックを再び背負う。
「さーてと、出発といくか」
「ナオヤ様、我々はボールに戻ることにいたします」
フォロンの言葉に、俺はちょっと考え、首を横に振った。
「いや、もしよけりゃ、このまま一緒に来てくれねぇかな? ここ二日一人で歩いてみたが、やっぱ話相手がいないっていうのはどうにも辛いもんだ」
「ええの!? じゃウチ、ナオヤはんと一緒に歩く! フォロンちゃんはどないすんの?」
セレスは即決した、フォロンは一瞬だけ考えて。
「承知いたしました、ニビまでの道のり、この姿のままでお供いたしましょう」

かくして、俺達は、進軍を再開した。
目指すはカントーの最西端、その周囲にある山々からとれる鉱物を特産としている、昔気質の街、ニビ・シティ。
ジョウト生まれのこの俺が、足を踏み入れることになろうとは夢にも思わなかったな。
俺は、地図を取り出しながら、ここに来る事となった契機を思い出していた。
あれは、俺がジョウトでの長い旅を経て、五匹のポケモン達と出会い、彼らの協力を得て、チャンピオンとなった時だった。
突如、俺達の前に、まばゆい光をまとった、一匹の大鳥が姿を現した。
『鳳凰』、大鳥は自らをそう呼んだ。
日本各地で伝承として残されている、不死の妖鳥、究極の存在。
彼は、自分が『炎帝』、『雷皇』、そして『水君』を創造した事、そして自分は、全ての生命の行く末を見守る存在である事を俺に教え、

一つの頼みを俺に託した。
ポケモンを道具としてしかみなさず、その命を脅かす者達、ロケット団を倒して欲しい、と
ロケット団のやり口を目の当たりにしていた俺は、迷わず『鳳凰』の頼みを聞く事にした。
すると『鳳凰』は、さらに二つの情報をオレにくれた。
ロケット団の総本山が、カントーにあるらしいということ。
そして、カントーにも、彼の頼みを聞き入れ、ロケット団と戦っている男がいるという事。
男の名はマモル、かつて一度はロケット団を壊滅寸前まで追い詰めた、カントーの現チャンピオン。
俺は、彼と協力するため、その足取りを追っているのである。
posted by マテツ at 16:47| Comment(4) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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